『キッチン』吉本ばなな
こんばんわ。kuroiです。
今日はひっこし記念に吉本ばななさんの『キッチン』をよませていただきました。
ばななさんの著書は死をテーマに書かれることが多いですね。ばななさんのデビュー作でもあるこの作品ですが、やはり死がテーマになっています。それでも暗い雰囲気ばかりではなく、明るくチャーミングな部分もあって大変読みやすい一冊だと思います。
『キッチン』には表題作の「キッチン」とその続きの物語にあたる「満月―キッチン2」、そして泉鏡花文学賞受賞の短編「ムーンライト・シャドウ」が収められています。初版が1988年ですから、昭和の一番最後の年ですね。世界的に評価されている作品ですし、国語の教科書にも採用されているそうなので、読んでいる方もかなりいらっしゃるのではないでしょうか。
かけがえのない大切な人を失ったとき、ひとはどうすればいいのでしょうか。そのこたえを出すのは容易なことではないでしょう。ひとまずは家族や身近なひとに甘えることがいいのかもしれません。時間が解決してくれることもあるでしょう。しかし現実に大切なひとを失い、そのことをすっかり忘れて次のことに爽やかに進み出せることなどあるのでしょうか。
頼れる身内のないみかげ(主人公)に、やさしく声をかけてくれる雄一の存在はどれほどの支えになったことでしょう。ひとはささえあって生きていくと、どこかの学園ドラマで見た気がしましたが、まさにそのとおりです。辛い時は支え合って生きていくしかないのです。
もっとも重要なメッセージは、大切なひとの存在がまったく当たり前のものではないというところにあります。ひとの死は突然で(そうでない場合は幸運なのかもしれません)だれにでも平等であるという残酷さ。それが親友でも、肉親でも、愛するひとであっても。わたしたちがいつも一緒に過ごしている愛すべきひとたちが永遠のものでないことを実感させられます。そう思ったとき、大切なひとにやさしくなれるような気がします。
というわけでインフルエンザが全国で猛威をふるっておりますので、どうかみなさんご自愛くださいますよう。