kuroiの気ままブログ

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『騎士団長殺し』村上春樹

 久しぶりに村上春樹の1000頁を超える長編小説ということで、読むこちらとしてもなぜか肩に力が入ってしまいました。みなさんも経験がおありでしょう、好きな作家さんの小説を読むとき、わたしは高揚感で満たされます。

 

 

 春樹さんの小説は読みやすいのが一番ですね。文も歯切れがいいし、わくわくするような比喩もその楽しみの一部になっています。今回の『騎士団長殺し』もいままでの文体をそのままに、読後は「ああ、春樹を読んだ、堪能した」と満足する内容でした。

 

 

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騎士団長殺し 第1部・第2部』『多崎つくる~』以来となる長編。



 

 

 画家の〈僕〉は、妻に「一緒に住むことはできない」と唐突に告げられる。それからあてもない旅をする。その後友人を頼り、小田原の郊外の山の上にある一軒家に住み着くことになる。その友人の父となる人物は〈雨田具彦〉という高名な日本画家であった。そしてこの家はその画家の作業場兼別荘であったという。〈僕〉はとてもそこが気に入った。あるとき、天井裏で妙な包みを目にする。それは"騎士団長殺し"と題された一幅の日本画であった。

 

 

 書評などをするつもりはないのですが、しかし今回ばかりはあまりに世間の評価が賛否両論まっぷたつでしたので、ひとことだけでも書かなければなりますまい。

 今回の作品は、はっきりと申し上げて冗長が目立ちました。もちろんそれは村上春樹の空気感を醸し出す上で必要な過程でもあります。事実、これまでも長いだの、細かいだのいわれ続けているわけですから、これはもうそういう文体なのです。村上春樹の文学を構成する一部分なわけですから、それを切り離しては評価できない。

 ただし、それは村上春樹が好きで『騎士団長殺し』を読んだ人の感想です。村上春樹は人気作家です。そうなれば好きな人も、嫌いな人も、興味のない人まで読むわけですから、そのひとたちを1000頁超の結末までつれていこうと思えば、長かったのではないかとも思います。そりゃそうでしょうね。わたしだって興味もない長いだけの文章なら読めたものじゃありません。

 でもこういう評価をされることも人気作家の宿命なわけで。そもそも面白くなければ売れませんし、批評もされません。ファンならば『騎士団長殺し』は面白かった。そのひとことでじゅうぶんです。笙子さんはナイスバディだし、絵画教室の人妻はエロいし、まりえは少し胸がふくらんだ。それでじゅうぶんじゃないですか。

 

 

 昨日、近所のスーパーに行ったときのこと。中学時代の恩師を見かけました。女性の数学教師で、3年時の担任でした。その恩師は棚に商品を詰めていました。新人研修のみどりの腕章をつけて。わたしはすこし歩みを早め、その場をはなれました。