kuroiの気ままブログ

小説書いたり読んだり。

『檸檬』梶井基次郎

 京都に3年ほど住んでいた。休日に風情あふれる街並みを散策するのが当時の楽しみだった。古都の街並みはいつでもわたしの期待に応えてくれた。ダークトーンで統一された平屋の連なり、隅々に京都らしさを感じさせる家屋のディテール。時折顔をみせる、昔ながらの商店。それらはわたしのこころに沁みて、今も残っている。

 

 

 京都を舞台にした小説は多い。それは京都が個性にあふれた街であるからだろうか。その個性にインスピレーションを受けて、ふわりと頭に物語が浮かぶのだろうか。いずれにせよ、それが京都のひとつの魅力であることに違いはないだろう。

 

 

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檸檬梶井基次郎 表題作含む20篇。

 

 

 『檸檬』はわたしの最も好きな短編である。この短い話のどこに、それほどまでにひとを惹きつけるものが隠されているのかさっぱりわからない。しかし、面白い。まさに短編の見本と呼ばれる所以であろう。この小説が流行った当時は、書店に檸檬を置き去りにする事件が多発したとかしないとか。

 

 

 この話の舞台は京都・寺町である。今も情緒のあふれる街並みがつづく。お立ち寄りの際は舞台となった八百屋を探してみるのも面白いかもしれない。と、いいたいところだが残念ながらそのモデルになった八百屋も10年ほど前に閉店してしまった。三条通りにあったといわれる「丸善」もいまでは当然跡形もない。時代は流れてしまった。なんとも寂しいものであるが。

 

 

 ところでいまさらだが、芥川龍之介賞直木三十五賞が発表された。わたしの希望は町屋亮平さんと森見登美彦さんだったのだが、半分だけ希望を叶えてもらったカタチになった。森見さんは早くも見放されてしまった感が出ている気がするが気のせいだろうか。とはいえまだまだ機会はありそうなので頑張っていただきたいものだ。受賞の暁にはさぞかし京都も盛り上がることだろう。

 

 

 ところでコンビニチェーン店がこぞって成人誌の取扱を辞めるという。実は海外では誰もが利用するコンビニに、堂々と置かれていることはありえないそうだ。わたしには関係のない話だが、その手の筋の人には大打撃だろう。とくに配送業者は重さで料金を決めているため、かなりのウェイトを占める成人誌が無くなるのはかなりの損失だ。当然出版業界にも大きな痛手である。わたしには関係のない話だが。