kuroiの気ままブログ

小説書いたり読んだり。

『コンビニ人間』村田沙耶香

 今日はわたしが大好きな作家さんのお話を。

 

 

 今回は村田沙耶香さんです。彼女は作家仲間のあいだでは"クレイジー沙耶香"と呼ばれているとか。ラジオやテレビでもほかの作家さんがよくそのクレイジーぶりを紹介していたりしますね。そのクレイジーぶりが村田さんの魅力を一層ひきたたているような気がします。かわいい。

 

 

 そんな村田さんの著書は、やはり一風変わった作品が多いです。

 とくに性に対して、いびつな捉え方をした主人公が多いように思います。著書のなかではかなりおもいきった表現が見られます。ちょっと普通ではいいにくいようなことも、鮮やかに描いてのけるところが華麗です。そんなわたしの一番の愛読書がこちら。

 

 

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コンビニ人間文藝春秋



 

 

 芥川賞受賞作、さらには海外にも翻訳され、『The New Yorker』の「The Best Books  of 2018」に選出されるなど、もはや紹介するまでもなくなってしまいましたね。芥川賞に選ばれたときも、近年の受賞作にはなかった面白さだ!とか言われてましたしね、やはりそれは間違いがなかったと。

 でも本当に『コンビニ人間』は面白い。ストーリーはわかり易いけれど、展開は読めない。キャラクターは愛くるしいけれど、理解はできない。コンビニというあまりに手近でリアルな場所なのに、描かれているのはまるで異星人との遭遇です。このかずかずの矛盾が『コンビニ人間』を名作にしたのです。

 そしてもう一つ、これは村田作品に一貫して描かれていることなのかもしれませんが。著書がいつもわたしたちに問いかけるのは、「ふつう、ってなんだろう」という言葉です。わたしたちが疑いなく信じているものに容赦なくメスをいれ、手際よく解いてゆくその筆致にいつも見惚れます。気持ちがいい。

 わたしたちは普通でなければならない、そんな窮屈な世の中を生きていたようです。もちろん最近はそうでもない風潮も大いに感じますが。しかしこの根本的な概念までひっくり返しかねない村田さんのふつうへの切り込み方は尋常じゃありません。でもそれって大事なことだと思うんです。ふつうが正義だ、ふつうが正しい、そんなふうにふつうを振りかざすってとても危険な気がします。

 ふつうって、わたしたちが信じてる勘違いのことなんですよね。ぜんぶじゃないですが。

 

 

 このまえ、少し遠出して大きな書店に入ったのは良かったのですが、なんだか本屋さんというよりもおしゃれな空間として出来上がりすぎですよね……。もうおしゃれじゃないとゆっくりできませんよ的な空気出てますよね……。自然と早足になりますよね……。