kuroiの気ままブログ

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『イニシエーション・ラブ』乾くるみ

 これはもう名作の域なのでしょうね。

 

 

 いまさら解説やネタバレもないとおもうのですけども、読んでしまったものはしかたがありませんので、紹介していきます。前田敦子さんと松田翔太さん主演で映画にもなりましたね。いや、まさかこの小説が映画になるなんて……。と誰もが思ったわけです。それにはある理由が……。『イニシエーション・ラブ』を未読の方はここで引き返して、純粋な気持ちで読んでからこちらに帰ってきてほしいですね。そのほうが100倍楽しめるので。

 

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イニシエーション・ラブ』文春文庫 だまされましたね……

 

 

 この作品の素晴らしいところは一見するとただの恋愛小説、ラブ・ストーリーのように読みすすめてしまえるところです。するどい読者のかたなら違和感はあれども、まずまちがいなく最後までするすると読み終えてしまう。しかし最後の二行にはとんでもないことが書かれている。というカタチになっています。つまりミステリーなんですよね。人も死なないし、事件もおきない。でもわたしたちは騙されている。と。

 

 

 わたしははじめてこの小説を読み終えたときに、叙述トリックのとりこになったのを覚えています。なるほどと感心し、すぐにもう一度あたまから読み直しました。するとあちこちに散りばめられた伏線の数々によくもまあ、きれいに騙されたものだなあとあらためて感動いたしました。

 

 

 小説の妙はどこにあるのか。そういった議論はこれまでも幾多重ねられてきたことでしょう。この『イニシエーション・ラブ』においても、たくさんの批評があり、中には見当違いだと思われるような批判も含まれていました。たとえば、恋愛の物語としてみると非常にチープである。とか。……いや、そうじゃないでしょ。ラブ・ストーリーとして純粋に読んでもらうことこそがこの小説の仕掛けであって、恋愛の話の質を高めろってそれアンタ本気でおっしゃっておられますの?という感じですよね。

 

 

 しかしとにかくこの一冊は本好きなら、確実に手にとることになるであろう本です。未読のかたはぜひ、再読の方も読むたびに理解が深まって楽しいですよ。そのぶん積読がたまっていく……。

 

 

 それで思い出しましたが「積読」ってことばは海外にはないそうですね。あたりまえのような気もしますが、とにかく日本のつつましやかな文化のひとつとして大事にしていきたいものですね。積読はやく消化せねば……!!