kuroiの気ままブログ

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『君の膵臓をたべたい』住野よる

 「キミスイ」の愛称でお馴染みですかね。そう呼んでしまうと軽くなってしまいそうで、あまり略称は好きではありませんが。 ちなみに未読の方がいらっしゃるかわかりませんが、一応断っておくとカニバリズム(食人)のような描写は一切ありません(主人公のツッコミには登場する)ので悪しからず。

 

 

 まあお涙頂戴の予定調和小説ですよね、と言われてしまうとちょっと悲しい。たしかに物語の枠組みはそれほど新しいものとは呼べないかもしれません。余命を宣告された女の子。その事実をたまたま知ってしまう〈僕〉。死ぬまでにやりたいことをひとつずつ達成することが、彼女と〈僕〉の時間になっていく。そして別れは訪れる。

 

 

 

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『君の膵臓をたべたい』双葉社

 

 

でもこの作品はいわゆる薄っぺらい作品ではありません。インパクトだけを狙ったタイトルでもありません。そこには明確なテーマがあり、軽く読みやすい文章には作者の意図があるのです。ここでその話をしてしまうと物語の核心に触れてしまいますので控えますが、その真意はぜひ原作を読んでお確かめくださいませ。

 

 

 そしてなんといってもキャラクターの良さではないでしょうか。桜良と〈僕〉の軽妙なやりとり、息の合ったかけあいは、死をテーマに扱っているとは思えない明るさで、思わず笑みがこぼれます。漫画を読んでいるような印象を受けました(いい意味で)。ふたりの息がぴったり(見方によってはぴったりすぎる)で、いつまでも聞いていたくなるような会話文だなあと思いました。

 

 

 住野よるさんはこの作品以来すべて読ませていただいているのですが、やはり会話の書き方がフレッシュですばらしく愉快ですね。読んでいて楽しい。一番注目されたのはやはりこの『君の膵臓をたべたい』ですが、この作品が好きになった方なら、どれも楽しめると思います。

 

 

 これからも楽しみな作家さんですよね。

 

 

 この本今ともだちに貸しているんですが、とても反応が良かったです。あまり普段から本を読まないらしいのですが、そういう方でも読みやすい一冊ですね。