連載はじめました。
作家を目指している。それはもちろん職業としての作家という意味で。
作家になる方法は簡単である。
作品を書けばいいのだ。それが読まれるかどうか、その作品が本になって読まれるかどうかは関係ない。だからただ書けばいい。
そんなふうにハウツー本に書いてあった。だから、書くことにした。
しかし、どこかで寂しさも感じる。
この作品がどこかで誰かの目に留まってほしいとも思う。
書いた時点で作家にはなれるかもしれないが、それでは寂しいだけだ。
僕は読まれる作家になりたいのだ。
だから書く。
面白い作品が書ければ言うことはないけれど、もちろんそんなの最初から出来っこない。……できるやつもいるかもしれないけれど、僕には難しい。
いつか面白い作品が書けて、それが誰かに読まれる日まで書く。
書き続ける。
思っただけじゃいけないから、書き記すことにした。
誰も見てくれなくてもいいけど、自分と神様に約束する。
最初の作品(完成すれば)のタイトルは『嘘』にした。
なんだか、さっきの話の皮肉みたいなタイトルになってしまった。
でも僕は『嘘』にしたかった。
なぜなら僕が嘘つきだからだ。僕は小さな頃から嘘ばかり吐いてきた。もちろん誰でも嘘ぐらい吐くかもしれない。それでも僕は嘘つきだった。友達にも嘘を吐いた。先生にも嘘を、親にも、兄弟にも、恋人にも、そして自分にも。僕は誰よりも嘘つきだった。
自分に自信がなかったんだ。
弱い人間だったんだ。
だから……仕方なかった。
自分をさらけだしたら嫌われてしまう。なにもない。自分にはなにもなかった。頭は悪いけど、それでも頭を一生懸命使って偽りの自分をつくりあげた。それは愚かにもすぐにバレてしまうような嘘であったりした。本当の馬鹿。
人のものを盗るのも得意だった。
万引きも何回したかわからない。
でもそんなのお互い様でしょ? 僕だって盗まれたものなんて山ほどある。自転車なんかよく盗られたし、高価なゲーム機を盗られたことや、財布を盗まれたこともある。だから僕は悪くないなんていうつもりはもちろんないけれど、でも、仕方なかった。
だってそうじゃないと生きてけなかった。
不安で不安でどうしようもなかったんだ。
なんて、ほんと汚い人間だね。
仕方ないわけない。言い訳すんな。
どうしようもない。
作家になりたいだなんてよく言えたもんだよ。
でも、だから書き続けないと生きていけないんだよ。
代わりがないと生きていけないんだよ。
だから、書かせてください。
お願いします。